teracce 【いっぽ~不妊カウンセラーの独り言】不妊カウンセリングの歴史

医療コラム

1988年頃から、わが国で急速に生殖補助医療(体外受精など、卵子や精子を取り扱う技術)が普及してきました。医療技術者はその高度な医療技術を身につけるために施設や職種を超えて互いに協力し合い、切磋琢磨してお互いの技術力向上に努め、さらにそれらを支えるためにさまざまな研究会も発足しました。しかしこの頃、不妊治療を受けている患者さん達から、多くの不安や悩みを寄せられるようになったのです。

生殖医療は一人ずつ皆異なります。子供をもつこと、治療に対する考え方、経済的な負担、社会の偏見、仕事との両立、宗教・・・さまざまなことを考え、時にこれらを犠牲にしても望みが叶えられない現実、不安や焦燥感、治療中の身体のリスク・・・。

不妊治療を受けているカップルにとって「自分たちに何がおこっているのかわからない」・・・いわゆる患者不在の医療が展開されることとなりました。1998年、そのような状況を心配した医師や医療関係者が、不妊に悩む方々へ適切な不妊治療とその問題点、不妊治療の見通しなどに関する正確な情報を提供し適切な不妊治療を受けることができるように支援するとともに、不妊に伴う精神的苦痛やストレスに対しサポートを行い、またカップルが適切な自律的決定ができるようにサポートすることを目的とした専門的なスタッフ、不妊カウンセラーと体外受精コーディネーターの育成を開始しました。当時は「日本生殖医療研究協会(荒木重雄先生、佐藤孝道先生)」が中心となって養成を開始しましたが、現在はNPO法人日本不妊カウンセリング学会での学会認定資格となっています。有資格者においても、生殖医療、心理専門、生殖看護、細胞遺伝学、社会学などさまざまな角度から常に知識の習得に向けて研修を重ねています。