当院での不妊診療は婚姻(事実婚を含む)しているカップルを対象としています。
不妊基本検査を行いその結果に基づいて年齢、不妊期間、不妊原因、不妊治療歴、既往歴なども考慮し適切な治療法を進めていきます。不妊基本検査は治療方針を決定するために、ひと通り受けていただくことが大切です。
不妊治療の保険適用に伴い必要となる手続きのお知らせ
2022年4月より不妊治療への保険適用が開始されます。これに伴い、検査の結果などをもとに今後の治療方針を決める際に、ご夫婦へ「治療計画書」をご提示し、その内容にご同意頂けたというご署名を頂くことが必須となります。
治療計画書へご署名を頂く際には書類が必要となりますので、あらかじめご準備をお願いいたします。
治療方法として、タイミング法、排卵誘発法、配偶者間人工授精(AIH)を行います。器質的な疾患については開腹手術、骨盤腹腔鏡、卵管鏡下卵管形成術(FT)、子宮鏡下手術などを行っています。さらに、高度生殖補助医療(ART)では体外受精・胚移植(IVF-ET)、顕微授精(ICSI)、胚盤胞移植、胚凍結保存・融解移植、アシステッド・ハッチング、SEET法を行っています。また、当院泌尿器科と連携して精子凍結保存、精巣内精子回収法(TESE)、顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE)を行っています。
なお、当院ではAID(非配偶者間人工授精)、PGD(着床前遺伝子診断)、IMSI(高倍率で精子を選別する顕微授精)、IVM(体外培養)、卵巣凍結、卵子凍結、胚の再凍結融解、卵および胚のdonation、代理懐胎は行っておりません。
診療体制
当院では患者カップルを中心として医師、看護師、臨床検査技師、エンブリオロジスト、不妊カウンセラー、体外受精コーディネーターがチームとしてそれぞれの立場から患者カップルをサポートしています。総合病院の特徴を生かし、合併症がある場合は適宜当院の該当科へコンサルテーションしています。ただし、精神科疾患を合併している方(特に投薬治療されている方、病状が不安定な方)は精神科常勤医が不在のため、他院での治療をおすすめすることがあります。
学会との関係
当院は日本産科婦人科学会の生殖補助医療実施医療機関です。そのため同学会の会告を順守する必要があります。実施登録施設では同学会が実施する生殖医学の臨床実施に関する調査に対し報告義務があり、妊娠したART症例の妊娠経過および予後を同学会に報告しています。ご理解とご協力をお願い致します(もちろん個人情報は厳守されます)。
事実婚夫婦の方へ
事実婚夫婦の方も不妊治療の対象としています。この場合、事実婚不妊治療同意書に署名していただいた上で検査・治療を開始します。夫・妻それぞれの戸籍謄本(1通ずつ)、住民票(1通)を持参して、必ずご夫婦で受診してください。これら3つの書類は事実婚状態を確認するために6ヶ月ごとにご夫婦で受診・署名していただきます。
不妊治療費助成について
当院は茨城県不妊治療費助成事業の指定医療機関です。詳しくは、茨城県のホームページをご覧ください。申請についての相談や申請窓口はお住まいの管轄保健所となります。
不妊検査
不妊外来では、下記の不妊基本検査を行います。すべて終了したのちに治療を開始します。他院からの紹介状を持参した場合はその検査データを利用させていただくことがあります。ただし、必要と判断される検査を再度行うこともあります。
費用はおおよそのものであり、初再診料は含まれておりません。
※は自費負担です。◎は血液検査です。
黄体形成ホルモン(LH) 卵胞刺激ホルモン(FSH) エストロゲン |
排卵に関するホルモンの詳しい状態を見ます。 月経2~5日目に行います。◎ |
1,890円 |
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プロラクチン(PRL) | 高プロラクチン血症を調べるための検査です。 | 1,000円 |
経腟超音波検査 | 月経時の卵巣の様子を見ます。 多のう胞性卵巣の有無などを確認します。 |
※1,600円 |
子宮卵管造影検査 | Ⅹ線透視下で造影剤を子宮口より注入し、子宮内腔の状態や卵管の疎通性を見ます。月経ほぼ終了時期~月経10日目くらいまでに行います。 ※1参照 |
4,000~7,000円 |
卵胞チェック 子宮頚管粘液チェック |
排卵時期に毎周期行います。 内診および経腟超音波検査です。 |
2,200円 |
プロゲステロン | 黄体期(基礎体温が高い時期)のホルモンの状態を見ます。 黄体期6~8日目に行います。◎ |
1,100円 |
精液検査 | 検査用の容器をお渡しします。男性本人が泌尿器科を受診して検査を行うこともできます。 | ※1,600円 |
クラミジア抗体検査 | クラミジア感染の有無を調べます。◎ | ※6,900円 |
抗精子抗体検査 | 女性側に精子の動きを止めてしまう抗体がないかを調べます。◎ | ※5,500円 |
抗ミュラー管ホルモン検査 (AMH) |
卵巣機能の予備能力を調べます。◎ | ※4,900円 |
TSH・FT3・FT4 | 甲状腺機能に異常がないか調べます。◎ | ※6,400円 |
HbA1c | 糖尿病がないかを調べます。◎ | ※2,700円 |
感染症 | B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・梅毒・HIVの感染の有無を調べます。◎ | ※6,000円 |
子宮頚癌検診 | ※5,000円 |
- 1 子宮卵管造影検査は事前の予約が必要です。月経中に外来受診していただき、予約と検査についての説明、感染予防のために内服していただく抗菌薬の処方を行います。検査当日に出血が多くみられる場合はキャンセルとなります。
他院からの紹介で子宮卵管造影検査のみを行う患者さんもまずは月経中の受診をお願いいたします。
必要に合わせて行っている検査
GnRHテスト | 月経異常、排卵障害が疑われる時に行う負荷検査です。◎ | 6,000円 |
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テストステロン | 月経異常、排卵障害が疑われる時に行います。◎ | 1,100円 |
LH FSH エストロゲン プロゲステロン |
ホルモンの状態を測定します。血液検査あり◎ ※採血後検査結果が出るまでに1時間程度かかります。 |
1,100〜2,400円 |
ヒューナー検査 | 子宮頚管粘液内の精子の数や動きを見ます。 | 400円 |
子宮鏡検査 | 子宮内腔に異常が疑われる場合に、ファイバースコープで直接観察します。 ※事前予約が必要です。 |
2,400円 |
骨盤腹腔鏡検査 | 卵管周囲の癒着、閉鎖、子宮内膜症の有無などを直接内視鏡下で観察します。 | 150,000〜230,000円 |
骨盤腹腔鏡検査+卵管鏡検査 (卵管鏡下卵管形成術) |
上記の骨盤腹腔鏡検査に加えて卵管内腔の様子を観察し広げる治療を行います。 ※入院、全身麻酔が必要です。 |
200,000〜280,000円 |
風疹について
風疹抗体検査◎ | ※3,200円 |
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MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン) | 9,409円(自費) |
人工授精や体外受精を行う場合には男性側の感染症検査(B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・梅毒・HIV)が必要となります。
不妊治療
タイミング法
排卵日を推定するために超音波検査や頸管粘液、尿LH検査などを行います。性交のタイミングを指導します。
排卵誘発法
内服薬や注射剤にて行います。注射剤はLH:FSH含有比により分類されますが、個々の症例に応じて種類や使用量を決めています。rFSH製剤(遺伝子組み換えFSH製剤)は自己注射も可能です。
配偶者間人工授精(AIH)
洗浄濃縮した夫の精液をカテーテルを用いて経子宮頸管的に子宮内腔に注入します。
骨盤腹腔鏡(腹腔鏡下手術)
腹腔内を観察し、不妊原因(子宮内膜症、子宮筋腫、卵管水腫、癒着など)を検索、原因が見つかった場合には引き続き必要な処置(腹腔鏡下子宮内膜症焼灼術、病巣除去術、癒着剥離術、卵管形成術、卵巣嚢胞摘出術、卵巣多孔術、卵管切除術など)を行います。卵管鏡下卵管形成術(FT)を併用することもあります。全身麻酔で行います。入院期間は約5〜6日間です。
卵管鏡下卵管形成術(FT)
バルーンカテーテルを用いて主に近位卵管に対し卵管閉塞や狭窄を解除する方法です。当院では骨盤腹腔鏡と併用して行っています。
子宮鏡下手術
子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫などを子宮鏡下に切除します。全身麻酔で行います。入院は1泊2日です。
体外受精・胚移植(IVF-ET)
経腟的に採卵(静脈麻酔を使用)
調整した精子を卵の入った培養液に注入する(媒精)
胚移植する
採卵後、2日目(初期胚)~6日目(胚盤胞)の時期に胚移植する(=新鮮胚移植)。
採卵周期に卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高い場合や子宮内環境が整っていないと判断された場合には採卵周期には胚移植は行わず、全胚凍結することもあります。現在、当院ではOHSS発症や重症化のリスクを考慮し、基本的には新鮮胚移植は行わず、良好胚すべてを凍結する「全胚凍結」を行い、採卵周期の2~3周期以降に「凍結融解胚移植」を行っています。
顕微授精(ICSI)
重症乏精子症、精子無力症、精子奇形症、無精子症、抗精子抗体陽性の場合に行います。精液所見は正常でも受精障害があると判断された場合にも行います。
胚盤胞移植
受精した胚は分割し2日目には4細胞、3日目には8細胞になります。桑実胚を経て5~6日目には胚盤胞と呼ばれる状態の胚になります。このような胚盤胞を移植するのが胚盤胞移植です。移植方法は通常の初期胚移植と同じです。
凍結融解胚移植(FET)
余剰胚ができた場合、凍結保存し別の周期に融解移植します。当院では基本的にホルモン補充周期による移植を行っています。
凍結胚および凍結培養液保存期間更新について
凍結胚および凍結培養液の保存期間は保存開始日より1年間です。融解胚移植当日までに凍結期限が切れる場合は保存期間の更新が必要です。保存期限を過ぎて1ヶ月以内に更新可能で、必ずご夫婦で外来受診してください。保存期限が過ぎた場合、凍結胚および凍結培養液は事前通告なく廃棄しますのでご注意ください。
アシステッド・ハッチング
透明帯を薄くし胚の孵化を補助する技術です。当院ではレーザー法で行っています。
高齢患者、繰り返し良好胚を移植しても妊娠しない方、透明帯が厚い、凍結融解胚移植などの場合に行います。
子宮内膜刺激胚移植法(SEET法)
採卵周期に胚盤胞まで培養した培養液を凍結保存します。この培養液には胚が分割していく間に分泌される何らかの物質が含まれており、その物質が子宮内膜に働きかけることにより子宮内膜が着床しやすい環境に整えられるといわれています。この考え方を取り入れたのがSEET法です。融解胚移植ホルモン補充周期において胚移植の3(または2)日前に胚盤胞まで培養した培養液をカテーテルで子宮内に注入します。
高濃度ヒアルロン酸含有培養液
※妊娠率向上のため2023年1月より胚移植(新鮮胚移植、融解胚移植)の際に原則全例で使用しております。
高濃度ヒアルロン酸含有培養液とは、名前の通りヒアルロン酸が従来の移植用培養液よりも豊富に含まれている(0.5mg/ml以上)培養液で、粘性があるのが特徴です。
ヒアルロン酸はヒトの生体内に存在する分子の一つであり、皮膚や関節の構成成分の一つで子宮内膜にも存在し、胚の保護、子宮内膜への着床を促す効果があります。
新鮮胚移植、融解胚移植どちらでも使用でき、高濃度ヒアルロン酸含有培養液を使用した胚移植の臨床的妊娠率、出生率を向上させるとの報告があります。
治療費
下記の治療法はすべて自費となります。診察料やお薬代は含みません。
人工授精(AIH) | 婦人科外来で行います。 | 5,460円(保険) |
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体外受精・顕微授精 採卵~胚移植まで
胚凍結保存~融解胚移植
オプション
SEET、AHA、高濃度ヒアルロン酸含有培養液のそれそれの項目をご参照ください。