teracce 注射による排卵誘発Q&A

医療コラム

ゴナドトロピン療法、もしくはFSH/hMG-hCG療法といわれる方法です。
排卵はFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)という二つのホルモンが卵巣を刺激しておこります。
このFSHとLHを体の外から注射により投与する方法です。

hMGとはヒト閉経後ゴナドトロピン(human menopausal gonadotropin)といいます。
閉経後の女性は卵巣機能が低下するため、卵巣を刺激しようとして脳下垂体から
大量のゴナドトロピンが分泌され、やがて尿中に排出されます。
この尿をから抽出するものが尿由来のhMG製剤です。
現在では遺伝子組み換え技術を使用してハムスターの卵細胞に合成させたFSH製剤も普及しています。
いくつかの製剤はホルモンの量や治療への反応をみながら医師が選択していきます。
ゴナドトロピン療法に用いられるhMG製剤とrFSH製剤の種類と特徴は次の表になります。

ヒト尿由来hMG製剤

遺伝子組み換え型FSH製剤(rFSH)

ヒト閉経後尿性ゴナドトロピン 精製hMG製剤
 製造法 閉経後女性の尿から抽出して作成 閉経後女性の尿から抽出しLH成分を除去して精製したもの 遺伝子組み換え技術を使用して、ハムスターの卵細胞に合成させる
 製品名
 ()内はFSH:LH比
hMGフェリング(1:1)
hMG F(1:0.33)
uFSH(1:0.0053) フォリスチム(1:0)
ゴナールエフ(1:0)
 使用歴 1960年頃~ 1990年頃~ フォリスチムは2005~
ゴナールエフは2015~

特徴

高齢患者や卵巣機能が低下した患者にはLH成分を含む方がよい、という考え方がある。 多嚢胞性卵巣症候群の患者にはLH成分を含まない方がよい、という考え方がある。 尿由来の不純物を含まず、感染症の恐れがない。またアレルギー症状が起こりにくい。
rFSH製剤は尿由来hMG製剤を持ちいたIVF-ET妊娠率は今のところ同等とされている。
また自己注射が可能であるが、やや高価である。

hCGはヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin)は胎盤から抽出したホルモンで、発育した卵胞を排卵させる機能や黄体を維持・活性化するという作用を持っています。

ゴナールエフはペンタイプもあり、一定の条件の下自己注射も可能です。

Q1.どういうときにこの方法を使いますか?

1.飲み薬での排卵誘発剤では排卵が起こらない場合
2.排卵はおこるもののなかなか妊娠につながらない場合(ステップアップ)
3.体外受精などで卵を沢山育てたい場合

Q2.FSH/hMG-hCG療法のメリット、デメリットは?

メリットは、非常に強い排卵誘発作用があること、また頸管粘液を増やし子宮内膜を整えることです。
デメリットとしては

1.排卵する卵の数の調整はできません。その結果、多胎妊娠になる場合があります。(飲み薬による排卵誘発での多胎になる頻度は2%程度、注射を使用した場合では10~20%となるといわれています。
2.卵巣過剰刺激症候群(OHSS:ovarian hyperstimulation syndrome)を起こす可能性があります。
3.hMGの注射は閉経した女性の尿から精製してつくられるために、きわめてまれですがアレルギーをおこすことがあります。

●卵巣過剰刺激症候群とは?

卵巣が腫れてお腹や胸に水がたまり(腹水、胸水)、腹部膨満、嘔気、嘔吐などの症状が出現したり、呼吸困難をおこすことがあります。またそれに引き続き血液がドロドロと固まりやすくなります。乏尿や血栓症が表れると生命に危険が及ぶこともあります。
症状が出た場合、適切な治療が必要となりますので、注射による排卵誘発をおこなっている時は、かならず医師に言われた通り診察受けてください。

Q3.どのような症状に気を付けたらいいですか?

1.下腹部の痛みや張り感など
2.熱が高くないか(基礎体温をチェック!)
3.急に体重が増えていないか?
4.呼吸が苦しくないか?
5.発赤、発疹、ほてり、注射部疼痛
6.気持ちが悪い、しびれ感、頭痛、むくみ、尿の量や回数の極端な増減など
「いつもと違う…」時は診察の上、医師に相談してください。