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泌尿器科の精索静脈瘤手術の長期成績を第68回日本生殖医学会でポスター発表しました

2023119~10日に石川県金沢市で開催された第68回日本生殖医学会学術講演会において、当院で行った精索静脈瘤根治術の長期成績をポスター発表いたしました(発表者:山﨑一恭医師)。精索静脈瘤根治術後の精液検査結果は「術後3ヶ月には改善し、その後は変化しない」という事が定説となっています。しかし我々は、術後3ヶ月以降に改善が始まったり、3ヶ月を超えて精液検査所見が改善し続ける患者さんに時々遭遇してきました。

そこでこの研究では、術後18か月以降まで追跡することができた64名の男性不妊患者さんについて、精液検査結果(精子濃度、総精子運動率、総運動精子数)の改善の仕方や、術後半年以降も改善し続ける患者さんの特徴を調べました。精液検査結果は、術後2-6ヶ月目には術前より改善し、14ヶ月以降も上昇し続ける傾向がありました(図1)。また、術後の総運動精子数が上昇し続けたのは10名で、その特徴は原発性不妊(一人目不妊)であること、両側ではなく左側だけの精索静脈瘤であることでした(表1)。

今回の研究から、原発性不妊症の患者さんの一部では、精索静脈瘤根治術後、長期に渡り精液検査結果が改善し続けたり、長期間経過後に改善のピークを迎えたりすることが示されました。不妊治療のステップダウン(体外受精/顕微授精といった高度生殖補助医療から人工授精/タイミング法などの一般不妊治療への移行)を希望する原発性不妊の患者さんカップルにおいては、早めに精索静脈瘤根治術を行い、その後ステップアップを決断するまである程度長期間待つ、という選択肢もありうると考えられます。