teracce 人工授精Q&A

医療コラム

人工授精(artificial insemination with husband’s semen:AIH)とは精子を子宮の中に送り込む手助けをする方法です。
主に子宮内に精子を送り込むことから子宮内人工授精法(intrauterine insemination:IUI)といいます。名称には人工とつきますが特に人工的な処置を加えるわけではなく、受精も着床も自然にまかせています。

Q1.どのような場合に人工授精を行いますか?

以下の場合が適応と考えています。

  • 1.乏精子症や精子無力症など、受精の場(卵管膨大部)まで到達する精子の数が少ないことが不妊の原因と考えられる場合
  • 2.性交障害があるとき
  • 3.ヒューナー検査の結果がよくない場合
    (精子が頸管粘液を通り抜けることが出来ない場合や頸管粘液そのものの分泌がうまくいかない場合)
  • 4.原因不明の方のステップアップとして

Q2.方法を教えてください。

  • 1.まずは排卵日を特定します。基礎体温の測定、卵胞チェック、頸管粘液の観察、尿中LHテストなどを行い、排卵日を予測します。
  • 2.排卵は自然にまかせる場合と排卵誘発剤を使う場合があります。人工受精前後にhCGの注射を打ってタイミングを合わせます。
  • 3.排卵予測により人工授精の日を予約します。その際精子をとっていただく容器をお渡しします。
       人工授精は完全予約のため、卵胞チェックを行ったうえで医師が必ず予約をいれます。
  • 4.人工授精当日、用手法で事前にお渡しした容器に精液を採取していただきます。
       病院での採精を希望される場合は事前に医師にご相談ください。
       容器にかならず奥様の診察券番号、名前、採取した時間を記入してください。
       精液の入った容器は看護師が名前の確認をしてからお預かりします。精液は洗浄濃縮します。(約1時間~1時間半かかります。)
  • 5.外来診察室で洗浄濃縮した精子を子宮の中に注射器のようなカテーテルでゆっくり注入します。
       注入後、安静の必要はありません。
  • 6.感染などの予防のために抗生剤を当日1錠服用していただきます。(前日夕食後から3日間の場合もあります)

Q3.人工授精後、日常生活で気を付けることはありますか?

人工授精当日は感染予防のために夫婦生活や入浴、プール、温泉などは控えシャワー浴にしましょう。
少し出血することがありますが心配いりません。それ以外はいつも通りの生活で構いません。
出血が多い場合や、高熱が出る、強い腹痛のある場合は受診してください。

Q4.精子を洗浄する理由は何ですか?

精液の中にはプロスタグランディンという子宮を収縮させるホルモンが含まれています。
精液をそのまま子宮腔内にいれると子宮が収縮して痛みを起こすことがあります。
また精液そのものに細菌が含まれていることがあり、感染を起こすことがあります。
精子洗浄濃縮を行うことによってプロスタグランディンの量を軽減することができ、感染をある程度予防することが可能です。
また死んでいる精子や未熟な精子、奇形の精子、精子の動きを悪くする物質などをある程度取り除き、
動きの良好な精子を集めてきます。

子宮の中にいれる洗浄処理後の量は0.5mlと大変少ないものですが、この中に精子が濃縮されています。
外来で医師から「精子の処理前と処理後の状態」というお話があると思いますが、
このような目的で処理を行っていることを理解しておいてください。

Q5.人工授精の妊娠率はどのぐらいですか?

人工授精を行うとすぐに妊娠するという印象を持っているかたは結構いらっしゃいますが、けしてそういうことではありません。
妊娠率は10%前後で自然周期によるAIHよりクロミフェン療法やhMG-hCG療法を組み合わせた方が妊娠率は上昇します。

Q6.人工授精は何回行いますか?

当院では4~6回をめどとして、体外受精にステップアップをご提案します。
ただし性交障害など機能性不妊の場合は施行回数にこだわらず、患者さんご夫婦と相談していきます。

人工授精を何回行えばいいか?
体外受精はまだ考えていない…、経済的に人工授精が限界…とご夫婦の考え方はさまざまですし、生活環境もみな異なります。
でも、もし同じ治療が長く続いて「このままでいいのかしら?」とチラっとでも頭をかすめたら、
一度治療の経緯を見直してみましょう。一緒に考えたいと思います。

一般不妊治療計画書について

人工授精を開始する際にはご夫婦への人工授精用の一般不妊治療計画書のご説明とお渡しが必要となりますので、
医師の指示がありましたらご夫婦で受診していただくようお願いいたします。